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ビートルズに関する本には、「For Hardcore fan only」とでもすべきものが、たまにある。 「どんな話を聞いても、ファンをやめたりせず、自分の人生の教訓にできる人だけが知るべき情報」=「酸いも甘いも噛み分けたベテランファンが、ビートルズ研究の一環として把握しておくべき情報」というものが存在するのだ。 本書は、まさにそんな情報がたっぷり載っている一冊である。 著者ピーター・ドゲットは、1957年生まれのイギリス人。幼いころからビートルズ・ファンだった彼は、1980年に「レコード・コレクター」誌のスタッフになる。同じ発行人が「マンスリー・ビートルズ・ブック」の復刻版も毎月刊行していた関係で、両誌に21年間原稿を書いていた人物である。その間、いろんな関係者にもインタヴューしてきた。 一方、彼より三歳若い私(宮永)は、日本の石川県金沢市でこの「ビートルズ・マンスリー・マガジン」復刻シリーズがスタートしていることを知って狂喜乱舞し、1977年(高2)から東京の洋書店から郵送で定期購読し、毎月食い入るように読んでいた。 復刻版を挟むように前後に数ページついている最新情報ページも嬉しかった(そういった部分をピーター・ドゲットは1980年から書いていたのだ)。 60年代にあった投稿欄「LETTERS from Beatle PEOPLE」に加えて、最新情報のページには「MORE RECENT LETTERS from Beatle PEOPLE」が新設されており、私の投稿が掲載されたこともあった。 「私は17歳の日本のBeatlemaniaです。」と書いた箇所が「私は17歳の日本のBeatlemaniacです。」と直されて掲載されていたのは、眼からウロコだった。「Beatlemania」は「ビートルズ現象」という意味で、「ビートルズの熱狂的なファン」という意味はないことを肌で学んだ瞬間だった。 閑話休題。 アラン・クレイン(本書ではアレン・クラインという表記で統一)をマネージャーに招いたことでメンバー間に生じる長年に渡るいざこざ、EMIやキャピトルさえも相手どらねばならない多くの訴訟案件、自分たちが任せていた財産管理者たちの裏切りと訴訟、ビートルズの名前を使って不当に金儲けをしようとする者たちへの訴訟、莫大な弁護士費用がかさむのに自分たちがこれまで稼いだアップルのお金に手を付けられない兵糧攻め状態、メンバーが個別にレコード会社と交渉し獲得した条件の差から生じた反目、「マイ・スイート・ロード」を盗作だとしてジョージを訴えた会社をアラン・クレインが買収しジョージから賠償金をせびる側に回っていたりする複雑な裏切り関係・・・。 この本は、断じて低俗な暴露本ではない。おそらくかなりの信憑性があることは、筆者の文体を含め、直感的にわかる。それだけに多くの初見の事実に、出典が明らかにされていないのは惜しいところだが、参考文献が巻末に山のように列挙されている(※)から、おそらく作者が長年に渡って読んできた膨大なビートルズ本を通じて血肉となっている情報をベースに、長年のインタヴューなどで独自に獲得した多くの情報と併せて『ビートルズのお金にまつわる苦悩史』という壮大なパズルを組み立てて、世に呈示した大著なのだろう。 メディアを通じて我々が見聞きしてきた「解散後のメンバーのいろんな言動」が、この本を読めば、線を結んでありありと浮かび上がってくる。 創作活動と真逆の部分で、時間もエネルギーも財産も消耗させられる苦悩と恐怖は、常人なら一晩で髪が真っ白になるほどだ。 そんな状況の中、よくぞメンバーがあれだけ正気を保って素晴らしい作品を書いていたものだと、とてつもなく感動させられる。 初心者が読めば、あまりのギスギスした内幕に幻滅する可能性が高い。そもそも、初心者がこの本よりも前にまず押さえておくべき重要なビートルズ本は、世にいろいろある。 歴史に「もしも」はないが、「ジョンとポールが一緒に曲を書いてレコーディングするチャンス」が何度もあったことも本書では生々しく明かされている。どれも、ひょんなことから実現しなかったのだが、それに対する「神の眼」での無念さは、作者の抑制した筆致からも伝わってくる。 ビートルズを深く愛するディープな研究家が、独自の膨大な研究成果を整理して、このような形で世に残してくれたことに拍手を贈りたい。 ※(追記) 出典が記載されていない件に関しては、本ブログ掲載後、すぐに担当編集者のかたから御連絡をいただいた。 『出典は原書にはあったのですが、各紙誌の名前や発売日が記載され、あまりに膨大なのと、あまり日本の読者に馴染みがないものだったので日本版では省いて参考文献だけにいたしました。その旨ご了承をいただけますとありがたいです』とのことである。 「資料的価値」と「読み易さ」、どちらを優先するか担当編集者としては相当悩まれたに違いない。
by B4-univ
| 2015-01-31 17:03
| レヴュー
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