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ライフログ
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「大瀧詠一は元祖・渋谷系である」という原稿を、90年代前半に雑誌「宝島」に執筆したことがあります。 それはどういう意味か。
そもそも「渋谷系」とは、洋楽マニアの日本人ミュージシャンが、古今東西の音楽からのさまざまな引用や目配せを散りばめて呈示する新しい音楽ジャンルです。だとすれば、それは大瀧詠一が大昔から一貫してやっていることじゃないか、という論旨です。
渋谷系というジャンル名の由来は「渋谷の大型輸入レコード店で売れている日本人ミュージシャンの作品」とか「普段は渋谷の小さな輸入レコード店でマニアックな洋楽を買っている層が買う、日本人ミュージシャンの音楽」というものです。90年代に隆盛をきわめ、個々の楽曲に引用された元ネタ(イタリア製のB級映画「セッソ・マット」「黄金の7人」のサントラなど)までが「渋谷系」コーナーにずらりと並び、それらをワクワクして聴き込みながら、その映画音楽の作曲家の他の作品を聴くようになったり、そこに魅力的なスキャットで参加していた女性歌手の他の参加楽曲を聴いてみたりと、自分がこれまで知らなかった新たな音楽ジャンルに出会っていったものです。
当時、川勝正幸氏がいみじくも「世界同時渋谷系化」と書いたとおり、世界中で同時多発的に、垢抜けたジャケット・センスを含む温故知新ムーヴメントが勃興しました。渋谷系はお上品だけではありません。暴力温泉芸者やヤマタカアイなど、エレクトロでビザールで、セカンド・サマー・オヴ・ラヴの要素もありました。あのサザン・オールスターズまでが、打ち込みのクラブ系重低音サウンドでシングル「愛の言霊」をリリースし、ぎらつくメタリックなCG映像を作ったのは、まさにこの潮流を取り込んだものでした。 67年のサマー・オヴ・ラヴのとき、世界中の広告・ファッション・エディトリアルの分野でペイズリー柄やサイケデリックというキーワードが席巻した状況はきっとこうだったんだろうなと、あのとき疑似体験できました。つまり「どういう流れで世の中が今こんなことになっているのか」、判る人だけが判っているそんな出来事だったからです。 それは最近の、宮藤官九郎やピエール瀧や阿部サダヲやリリー・フランキーや村岡希美や池谷のぶえといった人たち(敬称略)がお茶の間レベルにまでお馴染みになっている状況を見て、判る人だけが感無量になっているのと同質のもの、といえばわかりやすいでしょうか。 そして「渋谷系」の概念はその後ますます拡散と浸透を遂げ「渋谷系」という言葉はほとんど使われなくなりました。 個々のアーチスト、たとえばコーネリアス(小山田圭吾氏)を例にとっても、今や「音響系」といったカテゴリーに属する作品を発表するまでになり、「渋谷系」という言葉ではとらえきれない状態になっているからです。
しかし、あの素晴らしい「渋谷系」というジャンルを一過性のものとしてよいのか。 きちんと総括し、きちんとジャンルとして先に進むべきではないか。 誰かがやらねばならない作業でした。でも誰が?
その答えがライブ「野宮真貴、渋谷系を歌う」です。 「渋谷系」楽曲と、「そのルーツとなった」楽曲を、新たなアレンジで呈示するもので、Billboard Liveで開催されたライブ盤が昨年リリースされました。 昔懐かし「実況録音盤」という表記も、レコード・コレクター諸氏には「わかってるなあ」とニンマリでしょう。
そして2015年11月11日、今度は「スタジオ録音」でまとめた最新作がリリースされました。 「世界は愛を求めてる。What The World Needs Now Is Love~野宮真貴,渋谷系を歌う。」がそれです。(人を食った、こんなジャケットも含め、実に渋谷系です。) 野宮真貴氏とプロデューサーの坂口修氏の対談で、選曲とアレンジについて語られている部分を読めば、このプロジェクトがなるほど「渋谷系の進化形」であることがよくわかります。
坂口 達郎さんの曲は女性には歌うのが難しいと思って悩んだんですが、これなら同じシュガー・ベイブに在籍していた大貫妙子さんが作詞だし、シリア・ポールさんもカヴァーしているので合うかなと思って選びました。 野宮 私が歌ったヴァージョンは、達郎さんとシリアさん両曲のプロデューサーだった大瀧さんに敬意を表して、ニューオーリンズ風のアレンジになっています。
坂口氏は、2013年の大瀧さんの急逝後、ナイアガラ・エンタープライズも任されることにもなりました。その事実を知っている方であれば、正面切って「渋谷系の元祖」(=大瀧詠一)の楽曲を選ばず、そこはかとない形でリスペクトを捧げているところがナイアガラ的だと感じることでしょう。
その在り方は、大瀧さんのこんなエピソードを思い出させます。
大瀧さんは「ナイアガラ・ムーン30周年記念盤」の裏ジャケットの右端に「ジミー・ハスケル楽団によるビートルズのマイナス・ワン・レコード」を飾っています。 大瀧さんがラジオの「新春放談」で「10代のときにこのレコードをバックにテープに吹き込んだビートルズ楽曲がある」「そのレコードをまた入手したいと思っているが中古盤市場でなかなか出てこないんだよ」とおっしゃっていたのを多くのファンが聴いていました。 それから時は流れ、そのレコードがオークションに出たことがありました。 私は大瀧さんにお知らせし、大瀧さんはそれを入手できたことを大層喜ばれていました。 更に数年後、大瀧さんのアルバム「ナイアガラ・ムーン」の30周年記念盤が出たとき、裏ジャケットの右端にそのレコードが写っていました。 その意味するところとして大瀧さんは「ナイアガラにとってビートルズとエルヴィスは空気のように血肉となっているからこそ、敢えて正面切って取り上げることはなかった。ビートルズへのリスペクトをこのアルバムを飾ることで表現しているのが実にナイアガラ的でしょ?」と私におっしゃってくださいました。粋なさりげなさは、ナイアガラ・イズムなのです。
大瀧さんの構築した世界である「ナイアガラ」が、不思議な縁によって、坂口氏というこれ以上望めないほどの適任者(音楽的知識、ナイアガラ・イズムの理解度etc.)にきちんと管理されている現在の状況はナイアガラ・ファンにとって実に幸運と感じています。
ちなみにその「ジミー・ハスケル楽団によるビートルズのマイナス・ワン・レコードが写っているナイアガラ・ムーンの裏ジャケット写真」は、今年リリースされた「ナイアガラ・ムーン」40周年記念盤(CD、アナログ)にも掲載されています。 更に、付け加えるなら大瀧さんの血肉となっているビートルズは、まさに「渋谷系の御先祖さま」というべき存在でしょう。 チャック・ベリーの「トーキン・バウト・ユー」のギター・リフをベースで引用した「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」、黒人ガールズ・グループのヒット・シングルのB面曲をかっこいいアレンジでカヴァーして「当然A面も俺たちは聴いてること、わかるよね」と聴き手に目配せしたりと、「音楽マニアで研究者がパフォーマーとなり、リスナーを啓蒙して行く」その在り方は、まさに渋谷系そのものと断言できます。 以上、大瀧さん・渋谷系・ビートルズの三題噺でした。
by B4-univ
| 2015-11-28 14:15
| 大瀧詠一氏・ナイアガラ
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